7月5日(土)の「里山里海マイスター養成講座」(金沢大学主催)は、古民家をテーマに行われます。テルミヌスメンバーでもある受講生の提案により実施するもので「公開講座」となっておりますので、興味のある方はぜひご参加ください。
以下に概略を掲載します(一部変更となることもあります)。
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「能登半島の古民家と里山里海の未来」
日時:平成26 年7 月5 日(土) 9:30~16:30
場所:旧勝東庵(珠洲市蛸島町)と現地見学
【講義のねらい】
能登には、茅葺きあるいは能登瓦の屋根、アカマツやクリの梁を使用した伝統構法の家、潮風を避ける間垣、稲を干す稲架(ハザ)など、長い歳月の中で培われてきた建築物が今も数多く遺っており、「日本の原風景」とも称される里山里海の景観を構成する重要な要素にもなっています。しかし、一方では、活用されないままに朽ちていきつつあるものも少なからずあり、民宿やレストランへの転用などその活用に当たっても、法制度の問題等があることが指摘されています。
能登の古民家の持つ価値とは何なのか――単に文化財的な視点から捉えるだけではなく、日常の生業や暮らしの延長線上で利活用を図り、貴重な地域資源として次世代へ受け継いでいくために、今、何をどうしたらいいのか。その課題と方策について、全国の事例を知る安藤先生と能登の古民家保存の状況に詳しい萩野先生から学び、行政の方々にも加わっていただいて意見交換をしたいと思います。
【スケジュール】
午前の部(司会:江田敏昭)
講義:「古民家再生における課題と展望」(仮) 9:30 ~ 10:30
講師:安藤邦廣(筑波大学名誉教授、歴史的建築物活用ネットワーク共同代表)
民家を建築する過程には、様々な職人の技が集約されています。自然共生、循環型社会の構築が求められる今、古民家がもつ価値はどこにあるのかについて、全国での古民家活用の実績・事例を交えてその課題と展望、能登における空き家活用の意義や可能性について講義していただきます。
話題提供:「能登の土蔵修復や古民家再生の実践と課題」 10:30 ~ 11:00
講師:萩野紀一郎((萩野アトリエ、まるやま組、金沢工業大学非常勤講師)
能登に移住した際に借りた民家の応急改修から、2007年の能登半島地震で被害を受けた土蔵や民家の再生、近年手がけた古民家改修事例など、能登における具体的な再生事例を紹介し、その過程やそれに関わった人たちとの協働作業から見えてきた、様々な課題、困難、魅力や成果について講義していただきます。
トークセッション 11:15 ~ 12:00 (進行:渋谷 梓)
上記お二人の講師にHARNET(歴史的建築物活用ネットワーク)事務局の西本千尋さんにも加わっていただいて、持続可能な能登の地域づくりや里山里海景観の保全に向け、古民家活用にどのような意味があるのか、そのために乗り越えるべき課題は何かなどについて、受講者からの質問にも答える形で意見交換を行います。
また、受講生有志らによる「古民家どこどこ調査」を通じて浮かび上がった能登の古民家の現状や、古民家の清掃活動などについての報告も行います。
午後の部(里山里海マイスター受講生は貸切バスで移動します)
古民家活用事例視察 13:00 ~ 16:30 (コーディネート:米田幸助、落合 紅)
①TSUBAKIHARA(若山町鈴内)13:20 ~ 14:00
②乗光寺庫裏(飯田町)14:15 ~ 15:00
③古民家もより(上戸町北方)15:15 ~ 16:15
【講師プロフィール】
安藤邦廣 (あんどう・くにひろ)
筑波大学名誉教授、歴史的建築物活用ネットワーク共同代表
(プロフィール) 1948 年生まれ。筑波大学名誉教授・一級建築士。木造建築のデザインと技術開発を研究。「里山建築研究所」では、伝統・現代技術からなる板倉の家づくり他、日本の森林資源の大きな循環の回復を目指した古民家再生や里山保全の活動も展開している。
萩野紀一郎 (はぎの・きいちろう)
萩野アトリエ代表、まるやま組代表、金沢工業大学非常勤講師、輪島土蔵文化研究会前理事長
(プロフィール) 1964年生まれ。建築家、工学博士。東京、フィラデルフィアで、設計および教育活動後、2004年能登に移住。住宅やオフィスなどの設計から、土蔵や古民家の保存・改修の設計やワークショップなども手掛ける。また、建築だけでなく、里山のくらしやライフスタイルについて模索し、実践を試みている。