2014年3月10日月曜日

私たち(テルミヌス)について


 「テルミヌスってどういう意味?」というご質問をよく受けます。

 これは、古代ローマの神話に登場する神の名で、帝国辺境の目印として、その胸像が置かれていたとも伝えられています。日本で言うところの「道祖神」みたいなものでしょうか。転じて、「ターミナル」(終着駅)の語源にもなったようですが、一つの旅を終えて、また次の旅を続ける場所、と言うことも出来るように思います。

 私たちが活動のフィールドとする能登は、三方を海に囲まれた土地。古代、令制国としての「能登國」が出来たのは養老二年(七一八年)のことで、大化の頃から数えておよそ七十年後、延喜式では〈大国〉に類別されている越前国から、羽咋・能登・鳳至・珠洲の四郡が分立した〈中国〉として成立しました。近年は、他の多くの半島地域と同じく人口の流出に悩んでいますが、長い時間の中で育まれて来た固有の習俗や文化、景観などがが評価され、二〇一一年(平成二十三年六月)、「能登の里山里海」として、新潟県佐渡市の「トキと共生する佐渡の里山」とともに、日本で初めて世界農業遺産(GIAHS)に認定されました。

 私たちは、新たに特定非営利活動法人(NPO)を設立するに当たって、この「テルミヌス」を法人名として戴することとし、活動の手始めに、能登の各地に点在する古い民家の情報を調査・収集しつつその活用を図っていくほか、今後は、祭礼や民俗行事などの保全・継承にも努め、「日本の原風景」とも称される能登の姿を多くの方々に紹介していきたいと考えています。

(発起人グループ一同)





(参 考)

1 『世界大百科事典(第2版)』(平凡社)
  テルミヌス【Terminus】 古代ローマで,所有地の境界に立てた標石や標柱の神。一説では,第二代の王ヌマがこの神の崇拝を定め,カピトリウムの丘に神殿を奉献した。のち,その場所にはユピテル(ジュピター)の神殿が建てられたが,頑として移動を拒んだテルミヌスは,そのままユピテル神殿内に鎮座し続けたという。 

2 『新英和中辞典』(研究社)
  【terminus】(名詞)
   ① a.(鉄道、バスなどの)終点、b.終着駅、ターミナル
   ② 終端、末端

3 横川善正『ホスピスが美術館になる日』(ミネルヴァ書房)
  「テルミヌスの庭」なるものが一体どこにあるのかと聞かれても、実は即座に答えようがない。地中海のどこかにある島の、糸杉やオリーブの樹に囲まれたような実在の庭ではないからである。これから案内する「テルミヌスの庭」とは、終わりを始まりとするところ、あるいはギリギリの局面にありながら人生を有意義に送るところ、広い意味での「終の住処」が「創作の場」へと転ずるところを指している。
  …テルミヌスの具象的な彫像がつくられたのは、…ルネッサンスを迎えたヨーロッパ大陸においてであった。とくに、オランダの人文主義者デシデリウス・エラスムスや肖像画家ハンス・ホルバイン(子)に負うところが大きかった。…初老を迎えたエラスムスは、なにかの記念にとおもったのであろうが、ヨーロッパ各地で彼の衣鉢を継ぐ弟子たちに送るために、自身の肖像を彫った印璽(シール)をこしらえた。その裏面には、テルミヌスの胸像と、「私は譲れない」(Concedo nulli コンケドーヌーリ)の文字が台座に刻まれている。

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